環境リスク分析

モンテカルロ・シュミレーションを用いたリスク分析支援ツール


環境リスクとモンテカルロ・シミュレーション
  ◆ モンテカルロ・シミュレーションの役割

 近年PRTRの法制化やISOによる環境マネジメントの規格化等環境リスクへの関心がたかまり、環境リスク分野でのモンテカルロ・シミュレーションによるリスク分析が多くみられるようになりました。具体的な例としては、保健分野では環境中のダイオキシン類による暴露状況を把握するために実施された「モンテカルロ・シミュレーションによる個人総暴露量の推計方法の検討」の事例が環境省保健部より報告され(参照 URL@)、土木・建築分野からは「防波堤直立部の期待滑動量を用いた信頼性設計手法」、「性能的火災安全性評価における安全基準の分析」などがモンテカルロ手法によるリスク分析事例として報告されています。
(参考URL@ http://www.env.go.jp/chemi/report/h14-04/index.html)

  ◆ モンテカルロ・シミュレーションの動向

 さらに、様々な分野でリスク評価のための「リスク評価システム」構築の動きが活発化しています。モンテカルロ・シミュレーションによるリスク分析はこのようなシステムの構築においても、評価結果の信頼性を評価するサブシステムとしても重要な役割を果たすと考えられています。


モンテカルロ・シミュレーションによるリスク分析の課題と@RISK
  ◆ モンテカルロ・シミュレーションの精度

 モンテカルロ・シミュレーションの基本的な機能は、コンピュータによる試行を繰り返し、ランダムな変数(確率変数)を生成することにあります。従って、モンテカルロ手法を用いたツールの精度は、疑似一様乱数の発生手法および乱数を発生させた後の確率変数を生成する手法により異なります。
 @RISKは以下の手順で確率変数を生成します。
  @ 独自の手法で疑似一様乱数を発生します
  A 入力変数として定義した確率分布の累積分布関数の逆関数に@の乱数を代入し、確率変数を取得します
  B 取得した確率変数を内部メモリーに保存します
  C @〜Bまでを指定した反復回数だけ繰り返します
@RISKは標本抽出法としてモンテカルロ抽出法とラテン・ハイパー・キューブ抽出法をサポートしています。ラテンハイパーキューブ抽出法は、0〜1のレンジを反復回数に対応させて等間隔に分割し、各細分化されたレンジ内で乱数を発生させて標本の抽出(確率変数の生成)をおこないます。モンテカルロ抽出法は、実際のサンプリングでは収集しにくい寡少データを抽出するのに優位であり、ラテンハイパーキューブ法は、入力変数として定義した推定母集団分布に限りなく近似した標本分布を取得するのに優れています。@RISKはリスク分析の目的や性質に応じてこれらの手法を選択できます。

A社の乱数により生成した1000データのヒストグラム

@RISKの一様分布関数で生成した1000データのヒストグラム

  ◆ モンテカルロ・シミュレーションの課題

入力変数(不確定な値)の確率分布は既往の実態調査や過去の実績というサンプリングデータを元に推定されます。しかし、実際はサンプリングデータから確率分布を推定することは困難な場合が多く、この点がモンテカルロ法によるリスク分析の大きな課題のひとつとなっています。
@RISKにはBestFitと呼ばれるフィッティングツールがあり、サンプリングデータを元にその母集団分布を@RISKの用意する37種類の確率分布から推定し、近似性の高いものから序列を与えます。確率分布のパラメータの推定には最尤推定量を用い、サンプリングデータと推定母分布の密度分布曲線および累積分布曲線の二乗平均平方根誤差の小さい確率分布ほど高い序列が与えられます。適合度の検定には、χ2乗検定の他、Kolmogorov-Smirnov、 Andarson-Darling、二乗平均平方根誤差などの検定手法を用いることができます。
    
製作:Palisade Corporation (U.S.A.)
輸入・販売: 株式会社ディジタルデータマネジメント